Cookieレス市場の整理|「業界のリーダーが語る、これからのマーケティング」|【オプト】セッションレポート
オプトは、2023年11月1日(水)に、業界を代表するリーダーをお招きしたオフラインイベント「業界のリーダーが語る、これからのマーケティング〜Cookieレスの最新動向とその先のLTV戦略〜」を開催しました。「Cookieレス」の最新動向や企業に求められる対応、そして今注目が高まっている「LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)戦略」をテーマに、四つのセッションを行いました。
本記事は、オプトの野嶋友博が登壇した、セッション1「Cookieレス市場の整理」の内容をもとに作成しています。同セッションでは、Cookie規制がマーケティングに与える影響、規制が進むなかで、広告効果を維持・向上するためのメディアの育て方を紹介しました。
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目次[非表示]
- 1.Cookieレス市場の現状
- 2.マーケティングへの影響
- 2.1.iOSは特に規制が進んでいる
- 3.広告配信の自動化の落とし穴
- 3.1.自動化の弊害
- 3.2.自動化の弊害が起こる理由
- 4.メディアを育てる
- 4.1.メディアの現状
- 4.2.メディアを育てる方法
- 4.2.1.評価方法を変える
- 4.2.2.データの送り方を変える
- 4.2.3.コミュニケーションを増やす
- 5.まとめ
Cookieレス市場の現状
株式会社オプトの野嶋と申します。私は、新卒でオプトに入社し、2023年で業界9年目となります。直近は、学習塾やオンライン教育サービス、EC業界を中心に支援を担当しています。
今回、私からは、Cookieレス市場の現状についてお話しさせていただきます。
そもそも「Cookie」とは、Webサイトを訪問したユーザーの入力データや認証情報、利用環境などの情報であり、PCやスマートフォンに一時的に保存されるものを指します。
Cookieレスとは、これらのCookieを使用しない、ユーザーの個人情報の取得や追跡が規制される動きのことを指します。ユーザーのプライバシーへの配慮、保護の動きから、このようなCookieレス時代が生まれました。
Cookie規制へのユーザーの反応
Cookieレスの世界的な潮流をを受けて、世界的なプラットフォーマーであるAppleは、ユーザーの個人情報を保護するために、iOS(Apple社の製品に搭載されているOS)のアプリが、個人情報を取得する際に、本人からの同意を得るポップアップを表示するようになりました。この機能をATT(App Tracking Transparency)といいます。
このようにAppleによるCookie規制の動きが強まったことも影響し、TikTokにおけるOS別の広告費用を見ると、iOSの比率が2年で10%低下しています。
アドブロックツールの普及とプラットフォーマーの対抗
続いて、マーケティング市場の大きな動きの一つとして、広告をブロックする目的で使用されている「アドブロックツール」についても触れます。現在、世界中のインターネットユーザーの36%が、アドブロックツールを導入しています(※1)。
これに対して、YouTubeは、三度の警告でアドブロックツールの使用をやめなければ、YouTubeの動画を再生することが出来なくなるスリーストライクシステムを導入しています。(※2)
※1出典:GLOBAL MARKETING BLOG「世界の広告ブロックについての知るべき統計データ」
※2出典:AdGuard 「YouTube、広告ブロッカーを使って動画再生3回後視聴できなくなるという制限をテスト中」
マーケティングへの影響
ここまで説明した通り、デジタルマーケティング市場には、Cookieの使用を規制する動きがあり、アドブロックツールも普及しています。そのため、プラットフォーマーは、これまでさまざまなサイトから取得し統計的に学習をしてきた、「誰が、どんなサイトをいつ、どこで、どのくらい閲覧したのか」という情報を取り扱うことができなくなっています。
そのため、各プラットフォーマーは、自社のWebサイトやアプリが保有する情報のみを取り扱いながら、広告のターゲティングやクリエイティブの最適化を目指していくことが求められます。
以下は、2023年10月時点のCookie規制に関する、各プラットフォーマーの状況です。
iOSは、Cookie規制の大半が完了しており、2024年半ばからGoogle Chromeでも3rd Party Cookieの使用が段階的に制限されます。
iOSは特に規制が進んでいる
オプトでの広告運用実績に基づくと、近年、iOSのサイトセッション情報が減少傾向にあります。
Appleのデバイスを使用するユーザーが大幅に減ったことは考えにくいため、Cookie規制の影響で、計測できるセッションが減ったと考えられます。
また、検索では、Appleにより開発されているウェブブラウザ「Safari」が65%使われているのに対して、リターゲティング広告におけるSafariの使用率は35%というデータもあります。
これも、Cookie規制の影響で、Safariでリターゲティング広告の成果を出しにくくなっているためと考えられます。
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広告配信の自動化の落とし穴
このようにCookie規制が進み、プロモーション活動が厳しくなるなかで、広告配信をAIに任せておけば良いという話もききます。ここでは自動化の問題について解説します。
自動化の弊害
今回は、本イベントの広告を例に解説します。本イベントでは、集客のために五つのクリエイティブを制作し、広告を配信しました。
その五つの広告のなかで、申込数が最も多かったのは、私が担当するセッション1のクリエイティブでした。
しかし、CPA(Cost Per Action:コンバージョン単価)まで確認すると、セッション1のクリエイティブの値が最も高くなっています。
ほぼ同じ申込数だったメインバナーと比較すると、CPAが約3倍になっています。広告配信をAIに任せると、このような事態が起こります。AIの精度は年々向上しているはずなのに、なぜこのような事態が起こるのか、次の項目で解説します。
自動化の弊害が起こる理由
ここでは、カーナビを例に解説します。同じデータと同じアルゴリズムを活用するカーナビは、最適な経路として同じ道を案内します。そのため、同じカーナビを使う人が多いほど、その道は渋滞します。
これと同様のことが、AIを用いた広告配信でも起こっているのです。また、Cookie規制の影響でプラットフォーマーが得られる情報が少なくなり、同種の商品の細かな特性を活かした訴求がしにくくなっている環境も関係しているでしょう。
計測できるコンバージョンが欠損すると、制限されたデータで機械学習が行われるため、同じデータで同じターゲットに広告を配信してしまいます。その結果、広告のパフォーマンスが低下します。これがAIを用いた広告配信をされる際に留意したい弊害です。
メディアを育てる
このようにCookie規制が進み、広告のパフォーマンスの低下が懸念されるなかで「メディアを育てる」という観点が重要だと考えています。
メディアの現状
ここからはメディアに関連する登場人物を、次のように「生徒」「両親」「塾の先生」にたとえて解説します。
- メディア・広告媒体(生徒)
- マーケティング責任者(両親)
- マーケター(塾の先生)
生徒(メディア・広告媒体)は、AIの発達により毎年頭が良くなっています。一方で、塾の先生(マーケター)の教え方が分かりづらく、成績(コンバージョン数)がどんどん低下しています。また、テストで何点を取れているのか(計測)もいまいち分かりません。このように成績が低下していると、両親(マーケティング責任者)は口を出したくなってしまいますが、生徒は「自由にさせてほしい」との思いを抱いています。
両親は、生徒の行動についつい口を出してしまいます。しかし、生徒の成績は上がりません。通知表(レポート)を見ても、どの科目が悪いのか分からず、塾の先生の教え方に問題があるのかも分からない状況です。
塾の先生は、教材(データ)がなくなっていく状況にあります。生徒に合わせた教育手法が分からず、両親に対しても成績が落ちる要因を説明できずにいます。
これらの三人の登場人物の現在の関係をまとめると、次のような図になります。
このような状況で、生徒の成績を伸ばす(メディアを育てる)ために何ができるのかを解説します。
メディアを育てる方法
メディアを育てるためには、三つの方向性があります。
評価方法を変える
一つ目の方向性は、CPAのみで評価せず、事業全体の売上が中長期的に最大化される指標で評価するというものです。つまり、両親からの生徒に対する評価方法を変えるということです。
そのためには、「評価対象を変える」「評価の重みを変える」という選択肢があります。
最近、オプトでは、アンケートを活用してお客さまの声を得る取り組みに力を入れています。Cookieiが使えない状況で、ユーザーの情報を得るための取り組みです。
本イベントにおいても、申し込み時に「ご興味のあるセッションを一つお選びください」というアンケートを取らせていただきました。
その結果から、申込みのきっかけと興味の対象が異なる場合があると分かりました。私の担当するセッション1は最も多くのコンバージョンを得た一方で、「最も興味のないセッション」であったということが、アンケートの結果をもって分かりました。
このようにアンケートを取ることで初めて見えてくる側面もあるため、評価の手法を変えると、メディアの育成につながると考えています。
データの送り方を変える
二つ目の方向性は、Cookieに頼らない計測手法を用いて、精度の高い評価と機械学習を進めるというものです。つまり、塾の先生から生徒に、安全で正確な教材を渡すということです。
昨今、各プラットフォーマーがサーバーAPIへの対応を進めています。サーバーAPIとは、API(Application Programming Interface:ソフトウェアやプログラム、Webサービス同士を連携する仕組み)を活用して、遮断されづらい通信で、同意済みの個人特定情報のみを広告媒体に送信する仕組みです。Cookieの使用が制限されているため、サーバーAPIを使って送信された情報を機械学習に活用します。
現在、GoogleやFacebook、LINEヤフーといった主要なプラットフォーマーが、サーバーAPIを提供しています。
コミュニケーションを増やす
三つ目の方向性は、広告媒体(生徒)、マーケ責任者(両親)、マーケター(塾の先生)の三者間でのコミュニケーションを増やすというものです。CVR(Conversion Rate:コンバージョン率)のみならず、LTVを高めるため、商材を購入するまでのユーザーとのコミュニケーションを増やします。
例えば、ユーザー体験を高めるために、チャットコマースを活用して購入に至るまでの総合的なコミュニケーションを設計する手法があります。
また、動画の中にタップで反応する選択肢を設置した「触れる動画」を活用したインタラクティブLP(Landing Page:ランディングページ)により、購入前のユーザー体験を向上させられると考えています。
まとめ
Cookie規制は今後も進んでいきます。そうしたなかで、メディア(媒体)を育てるという観点が重要になると考えています。
メディア(媒体)を育てるためには、「評価方法を変える」「データの送り方を変える」「コミュニケーションを増やす」という三つの方向性があります。
Cookieレスの環境で、広告成果を低下させずにプロモーションを行っていく際の参考にしていただけると嬉しいです。
同イベントにおけるセッション4「LTV(ライフタイムバリュー)の罠」についてまとめた記事はこちらからご覧いただけます。
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