【ファネル拡大】準顕在層へアプローチする中間KPI設計と検証ロードマップ
自社の商品やサービスを認知している顕在層の顧客数には限りがあるため、顕在層に対する施策のみを展開していると、効果が頭打ちになる恐れがあります。また、Cookieの利用範囲の制限に伴い、顕在層に向けた施策の効果検証が限定的になる可能性もあります。
こうした背景から、ニーズはあるものの自社の商品・サービスを認知していない準顕在層に対する施策の展開が多くのマーケターの課題です。
本記事では、ファネル上部へアプローチする際の重要な考え方を紹介します。Cookie制限の状況や、ファネルを拡大するために重要な中間KPIについても解説するので最後まで読んでみてください。
また、本記事では顧客を示す顕在層、準顕在層、潜在層を次のように定義しています。
・顕在層:商品・サービスを認知した状態の顧客
・準顕在層:ニーズはあるが商品・サービスを認知していない状態の顧客
・潜在層:ニーズがなく、商品・サービスを認知していない状態の顧客
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目次[非表示]
- 1.計測環境の変化によりファネル上部へのアプローチが求められる
- 2.ファネル拡大の考え方
- 2.1.ユーザーの変化を認識と行動の双方から検証
- 2.2.各指標の例
- 2.2.1.行動指標としてのKGI
- 2.2.2.心理指標としてのKPI
- 2.2.3.運用指標としてのKPI
- 2.3.プランニングから検証までを一貫して設計
- 3.検証ロードマップの例
- 4.まとめ
計測環境の変化によりファネル上部へのアプローチが求められる
昨今、なぜファネル上部へのアプローチが重要とされているのでしょうか。以下ではその理由を解説します。
計測環境における制限が加速
ファネル上部へのアプローチの重要性が説かれる背景には、次の二つの理由があります。
・ファネル下部の顕在層に焦点を当てた施策を繰り返すと、アプローチするユーザーに限りがあり、やがて顕在層が減少していくため
・Cookieの利用範囲を制限する動きが強まっており、顕在層に向けた施策の効果検証が限定的になるため
一つ目の理由は、構造上の問題です。限られた予算の中で顕在層に焦点を当てた施策の割合を高めると、短期的には顕在層による購買を得られますが、マーケットにおける顕在層の数が減っていきます。一方で、顕在層にアプローチする施策に予算を割いているために、準顕在層へのアプローチができておらず、利用意向や購入意向を上昇させることができません。その結果、顕在層が減少します。
二つ目の理由は、世界的な潮流となっているプライバシーへの配慮に基づくものです。Cookieの利用範囲制限の加速により、これまでの施策の計測環境が大きく変わる恐れがあります。そのため顕在層にのみ焦点を当てた施策はリスクに繋がります。
こうした背景から、ファネル上部へアプローチし、中長期的に安定して購入が起こる状況を作っていくことが重要です。
ファネル上部へアプローチするための中間KPI設計が重要
ファネル上部に位置する準顕在層は、あなたの会社の商品・サービスに対するニーズを持ちつつも、商品・サービスを認知していない状態です。
そのため、ファネル上部へのアプローチには、認知・興味関心の前のフェーズにある準顕在層に対する施策が重要です。一方で、認知・興味関心の前のフェーズにある準顕在層に対する施策は、アプローチ効率のみでは正当に評価できません。つまり、アプローチ効率以外の中間KPIを適切に設計する必要があります。
中間KPIの設計ができないと、アプローチ効率の良いダイレクト系メディアにばかり注力してしまい、結果として顕在層の減少に繋がります。
ファネル拡大の考え方
ここからは、どのような考え方に基づいて、どのような指標を中間KPIとして設定すべきかを解説します。
ユーザーの変化を認識と行動の双方から検証
はじめに、適切な中間KPIを設計するための考え方として重要なのは次のものです。
「施策の成果を、心理と行動の双方から検証する」
つまり、次の図のようにファネル上部に位置するユーザーを心理と行動の双方で検証する形になります。
認知、理解、関心、共感といった心理の変容にもポジティブに評価できるものがあり、遷移率、CV(コンバージョン)、完全視聴といった行動の変容にもポジティブに評価できるものがあります。こうした前提を持ちつつ、心理の変化をKPI、行動の変化をKGIとすると目的からぶれない指標の設計ができます。
各指標の例
ここでは、KGI、KPIとして使える各指標の例を紹介します。
行動指標としてのKGI
はじめに、KGIとして設定する行動指標には次のようなものがあります。
・検索数
・申し込み数
行動指標を設定する際は、事業成果に紐づく指標を選ぶのが適切です。また、これらの指標は認知施策の足元の投資対効果の判断に使います。
心理指標としてのKPI
次に、KPIとして設定する心理指標には次のようなものがあります。
・企業認知
・特徴認知
・好意度
これらの変化は必ずしもユーザーの行動として表れない場合があります。そのためファネルの各層における課題に紐づく指標を選ぶ必要があります。そうすることで、行動の前の段階で起こる変化を捉えるきっかけとなり、ファネル拡大を成功に導きます。
運用指標としてのKPI
最後に、上述した二つの指標とは別に、運用指標として設計するKPIについても説明します。運用上のKPIには次のようなものがあります。
・リーチ数
・視聴数
・クリック数
これらは、あくまで運用面から日々のPDCAを回しやすいものを選択する必要があります。そして、運用上のKPIが上述した行動指標としてのKGIおよび心理指標としてのKPIにどのように繋がるかを把握できると、日々の運用改善の効果をKPIとKGIに反映することができます。
プランニングから検証までを一貫して設計
ここまでの内容で中間KPIとして設定すべき指標のイメージができたでしょうか。実際に各種の指標を設計する際は、次の図を参考にしてください。
特に、BtoD領域(ブランディングとダイレクトマーケティングをつなぐ橋渡しの領域)においては、Google社提供のソリューションや統計的なアプローチを組み合わせたうえで、プランニングから検証まで一貫して設計することが重要です。
検証ロードマップの例
ここでは、中間KPIを用いて広告効果を測った事例を紹介します。
名称認知/特徴認知が中間KPIとして機能した例
はじめに紹介する事例は、金融業界の会社を当社で支援した内容です。本件では、KGIおよびKPIを次のように設定しました。
・行動指標としてのKGI:純増申込数(検証手法:地域別相関分析)
・心理指標としてのKPI:特徴認知(検証手法:態度変容調査)
・運用上のKPI:短期:視聴完了、中期:ビュースルー来訪およびビュースルーCV(検証手法:媒体管理画面・キャンペーンマネージャー360)
その上で、各施策の効果を測ったところ、次の図のように名称認知、特徴認知、興味関心以降それぞれにリフトが見られました。
結果として、本件においては心理指標と行動指標のリフトに一定の連動性があり、認知施策によるダイレクト件数への寄与も確認できています。そのため、認知施策としては名称認知および特徴認知の上昇を目標としていくべきと結論づけることができました。
訴求の違いにより心理指標から行動指標が連動して変化した例
続いて紹介するのは保険業界における施策の実施事例です。本件では、配信クリエイティブの違いによるKPIの変動を検証しました。
その結果、次の図のように訴求を変えることで、心理指標から行動指標まで連動する形で実績差が生まれました。
そのため、心理指標がKPIとして妥当と結論づけることができています。また、本件ではクラスタの違いによる検証も行っています。結果は、次の図の通りであり、クラスタの違いにより心理指標から行動指標まで連動して実績差が生まれました。
そのため、クラスタの違いによる検証においても心理指標が中間KPIとして妥当であると証明できました。
まとめ
今回はファネル上部へアプローチすることの重要性および中間KPIの設計について解説しました。
顕在層の減少、計測環境の制限は多くの企業の課題となるはずです。そのため今からファネル上部に位置する準顕在層へのアプローチに着手する必要性は高いでしょう。
そして準顕在層に対する各施策の成果を適切に把握するためには、認知、理解、関心、共感といった心理の変容に関する指標を中間KPIとして設計する必要があります。その上で、KGIに設定した行動指標と合わせてユーザーを検証します。
当社は多くの業界において、心理指標を中間KPIとして導入し、その有効性を確かめてきました。ファネル上部に位置する準顕在層へのアプローチに課題を抱えている場合、ぜひご相談ください。
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