SPA業界_マーケティング×DX事例

【SPA業界】マーケティング×DX事例|店舗×ECの連携施策を解説

多くの企業において、業務改革に向けたマーケティングDXの動きが活発です。しかし、導入は必ずしも簡単ではありません。特に、小売業界は他業界に比べて、マーケティングDXの推進が難しいとも言われています


そこには、スタッフが導入ツールをうまく活用できなかったり、店舗×ECの連携施策を実施しようとしても、顧客に響かなかったりなど、さまざまな課題があるのが現実です。


そこで、今回は、小売業界におけるマーケティングDXについて、デジタルホールディングスグループにおいて、当社とグループ会社が伴走しながらCX向上を実現した株式会社オンワードパーソナルスタイル様の実例を紹介していきます。自社のマーケティングDXやCX向上を促進したいご担当者様は、ぜひご参考情報として、ご覧ください。



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目次[非表示]

  1. 1.小売業界の課題
  2. 2.オンワードパーソナルスタイル様が考える質の高いCX
    1. 2.1.オンワードパーソナルスタイル様が考えるCX
      1. 2.1.1.KASHIYAMAでの顧客体験にあった課題
      2. 2.1.2.KASHIYAMAの目指す顧客体験
    2. 2.2.CXを実現するためにはEXが重要
  3. 3.現場のツール使用を促す3つのポイント
    1. 3.1.活用者の成功体験の共有
    2. 3.2.推進チームのバージョンアップ
    3. 3.3.表彰
  4. 4.まとめ


小売業界の課題


小売業界には、主に、以下の3つの課題があります。


・人材不足
・消費行動の変化(ECシフト、選択肢の拡大)
・オムニチャネルにおける重要度の向上


国内のさまざまな業種で人手不足が指摘されていますが、特に小売業界では慢性的な人手不足の状態となっているといっても過言ではありません。その背景には、小売業界における労働のあり方の変化があります。同業界では、短い時間で、より多くの人が働くようになっています。そのため、人材不足が起こっています。*¹


また、ECサイトの利用増加や選択肢の拡大により、消費者の行動にも変化が見られます。これにより、オムニチャネルの重要度が向上しました。


この3つの課題をクリアするために、小売業を営む企業には、少ない人材で膨大なデータを活用し、CX(カスタマーエクスペリエンス)の質を高めることが求められています

そこで、まずは質の高いCXとは何かを考えていきましょう。今回ご紹介するのは、株式会社オンワードパーソナルスタイル様の取り組みです。

*¹出典:経済産業省 経済解析室:「いわゆる人手不足業種の背後にあるものは何か?」


オンワードパーソナルスタイル様が考える質の高いCX


ここからは、質の高いCXを考え、結果を出されたオンワードパーソナルスタイル様が実際に抱えられていた課題や、改善に活用されたツールを解説します。


オンワードパーソナルスタイル様が考えるCX


オンワードパーソナルスタイル様は、来店中だけではなく、来店前後の顧客体験も含めてCXと考えています。


そのため、顧客データに基づく一貫性をもった接客が、質の高いCXにつながるとオンワードパーソナルスタイル様は考えました。


また、近年ではユーザーの意思決定プロセスが変化しており、ブランドから配信される情報だけではなく、自分たちと同じ消費者の体験や口コミが購買行動に大きく関わっています。検討時のポジティブな口コミや紹介は購買の後押しになりますが、反対にネガティブな口コミや紹介は購買を躊躇させる原因になります


つまり、次の図のように既存顧客のCXを向上させてポジティブな口コミや紹介を生むことで、新しい顧客との出会いや、継続して購入し続けていただける関係構築につながります。

顧客体験の概念

続いて、オンワードパーソナルスタイル様が、どのように質の高いCXを実現されていったのかを紹介します。


KASHIYAMAでの顧客体験にあった課題


KASHIYAMAは、オンワードパーソナルスタイル様が手掛ける「オーダースーツ専門」のブランドです。「オーダーメイドの民主化」を掲げる同ブランドでは、上質な着心地のスーツを低価格・短納期で製造・販売しています。


KASHIYAMAでは、オーダーメイドでスーツを製作するため、来店時にデザインや素材の決定、採寸などを店員と顧客が1対1で約1時間かけて行っています。しかし、製作前のコミュニケーションを1対1で行うため、担当者しか顧客情報を理解しておらず、他の従業員が接客する際に、顧客の情報を活かせないという課題がありました。


その結果、顧客に対して好みではない生地を勧めてしまったり、すでに顧客が知っている情報をメールで送ったりなど、顧客にとって良い印象のサービスを提供できない状況が生まれていました。

結果、顧客としては、KASHIYAMAにネガティブな印象を持つことにつながっていました。


顧客体験を高められていないと感じたKASHIYAMAは、「どこの店舗でも、どのスタッフでも、ECでも、顧客の体型や特性、好みを理解して接客できるようにしたい」「顧客の好みを理解した情報を提供したい」と考えました。


KASHIYAMAの目指す顧客体験


上述したような課題を有していたKASHIYAMAでは、CXを向上させるべく次の2つに取り組みました。


・オフラインでの接客品質の向上
・オンラインでの情報発信の高度化


次の図の通り、オフライン、オンライン双方において、顧客データを総合的に活かしCXの向上につなげようと考えました。

顧客体験価値における顧客データ

接客品質を向上させるため、これまでの顧客情報をまとめた顧客カルテを作成しました。顧客カルテではシーズンごとの購入状況や平均購入単価、デザインの傾向がサマリで分かるように可視化されています。


これは、初めて接客する担当者でもスムーズな顧客対応を可能にすることが狙いです。


また、オンラインによる情報発信の高度化を目指すために、MA(マーケティングオートメーション)ツールを導入しました。MAツール導入前はメルマガ登録者全員に同じメールを送っていましたが、ツールを導入することにより、それぞれの顧客に合った情報を提供できるようにすることが狙いです。


例えば、KASHIYAMAのスーツを初回購入した20代前半の顧客だけを抽出し、お手入れ情報やスーツとは?などのスーツ初心者向けのメールを配信しました。他にも、年間3回以上購入し、1回の購入単価が70,000円以上のロイヤリティが高い顧客を抽出し、有名メーカーの特別な生地や限定生地の案内を送るなど、特別感を持ってもらえるような情報発信も行いました。


CXを実現するためにはEXが重要


このように、KASHIYAMAでは、CXを向上させるために利用できるツールを積極的に導入し、従業員への周知を図りました。しかし、ツールは思うように現場には浸透しません。CXが向上することが明確であるにも関わらず、顧客カルテやMAツールが現場でほとんど使われていなかった原因はどこにあったのでしょうか。

現場では、次の三重苦のような状態が見られました


・ほとんどの従業員はツールを見ない
・ほとんどの従業員は情報を入力しない
・ほとんどの従業員はツールがなくても困らない


そこで、KASHIYAMAでは、ツールを利用しない理由を調査しました。

その結果、ツール導入の「目的とゴール」に対する腹落ちが従業員のなかになく、本部から勧められたというだけではツールを使う気持ちにならなかったということが判明しました。また、そもそもKASHIYAMAには売上結果のみを評価する文化が根付いていたため、販売スタッフ単位でビジネスが属人化・個人商店化していました。このような状況から、CXを高めるというモチベーションが発生しにくい土壌だったこともわかりました。


KASHIYAMAは、この調査を通してCXを実現するためには、EX(従業員体験)が重要だということに気づきました。そこで、CXとEXの関係について次のような図を用意しました。


顧客体験と従業員体験の関係性


CXを向上させるためには、全体戦略を立案し、ツールを含めた環境構築をするだけでは十分ではありません。ツールを使うのは、あくまでも従業員です。質の良いCXを向上させるためには、従業員がツールを使いこなせる環境を丁寧に構築することが重要でした。


こうした、CXとEXの関係を把握していないと、導入したツールがうまく使われず、管理コストだけが増加していき、CXが頓挫するという結果につながります。


現場のツール使用を促す3つのポイント


このように、CX向上のためのツール導入が一度は頓挫したKASHIYAMAですが、次の3つの改革により、ツール導入およびCX向上を成功させています。


・活用者の成功体験の共有
・推進チームのバージョンアップ
・表彰


以下では、従業員とともに目的とゴールを共有し、現場でのツール使用促進を成功させた3つの改革について、詳細を紹介します。


活用者の成功体験の共有


ツール活用者からの成功体験の共有は大切です。ツールの活用イメージが明確になったり、どういうメリットが得られるのかを伝えられたりできるためです。


そのため、KASHIYAMAは、積極的にツールを使用したスタッフをピックアップし、その成功体験を他の従業員に伝えました。その結果、他の従業員にもツール活用の動きが起こり始めました。


推進チームのバージョンアップ


また、ツールを浸透させる取り組みを主導する推進チームのバージョンアップも重要です。


まず、KASHIYAMAの「目指す姿」を明確にし、優先して何をすべきかを洗い出しました。今すぐにできることを明確にし、どこに向かっているのか、何のためにやるのかについて従業員の理解を促します。


具体的には、次の図のように、顧客のジャーニーとシステムで「目指す姿」を描き、それを実現するためになすべき要素をワークショップ形式で洗い出しています

目指す姿

ワークショップの討議内容

その結果、「目指す姿」というゴールが明確になり、ツールを活用する意義に対する解像度があがり、顧客カルテを使用する目的への腹落ちにつながりました。


表彰


さらに、企業としてツール活用を進める本気度を示すために、ツールを上手く活用した人物や組織の表彰を始めました。

元々は、売上の結果だけで表彰をしていましたが、CXが向上した結果で得られるリピート人数やECの使用率などを新たに表彰の基準にしました。こうした表彰を行った結果、多くの従業員が自分の実績を意識するようになりました。


このように、CX向上の有無を表彰対象にすることで、従業員の意識が変わり、ツールを常に活用するようになりました。


以上のように、CXを向上させるためには導入したツールをいかに従業員に使ってもらえるのかが重要です。そのためには、導入だけを行って活用を現場任せにせず、ツールを活用する環境を戦略的に構築しなければなりません。こうした地道な施策が、最終的にCX向上につながっていきます。


まとめ


今回は、小売業界における質の高いマーケティングDXとそれを実現する手段について、株式会社オンワードパーソナルスタイル様の実例をもとに紹介しました。


同社が行ったように、顧客データに基づく一貫性をもった接客は質の高いCXにつながります。こうした質の高いCXを実現するためのツール導入は多くの企業で行われていますが、現場に浸透しないという課題を抱えるケースも少なくありません。そのような場合は、はじめに自社における質の高いCXを定義づけて、その上でツール活用を戦略的に促す取り組みを進める必要があるでしょう。


オプトにはさまざまな業界のマーケティングDXおよびCX向上の事例と知見があります。質の高いCX向上を実現し、売上と利益を向上させたいとお考えの場合、ぜひともご相談​​​​​​​ください。

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